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上の空の上|第12話|大切な人を看取った記録|012
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第13話
私は貴方が履きたがっていた靴を知っている
私は貴方が着たがっていた服を知っている
私は貴方のお気に入りの口紅を知っている
そして その在り処を知っている
塗る時いつも
気を付けていたことも知っている
マニキュアをお揃いにした
私たちの手はよく似ている
貴方に
置いていかれることを
あんなに怖がっていたけれど
今から
貴方をこの部屋に置いていく
出来ることが
きっと
まだあるから
この期に及んで
貴方に褒めて欲しい私は
暗闇の中で光る
矛盾した喜びを見つけた
それを集めて
悲しみの濃度を薄めていく
いくら馬鹿な私でも
いつかこんな日が来ることは分かっていた
だけど
こんなの全部
もっとずっと
先の未来だと思っていたよ
貴方はいつも
先回りして
心配ばっかりしてた
きっと
いずれ続く私たちが
何不自由なく
楽しく暮らせるように
急いで行ってしまった
そんな急いでどこに行くの
私には立ち止まってもいいって
振り返ってもいいって
言ったくせに
嘘つき
いっぱい色んなこと
約束したのに
一人で
どうやって叶えればいいの?
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