上の空の上

上の空の上|第13話|大切な人を看取った記録|013

uwanosora013

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は貴方が履きたがっていた靴を知っている
私は貴方が着たがっていた服を知っている

私は貴方のお気に入りの口紅を知っている
そして その在り処を知っている
塗る時いつも
気を付けていたことも知っている

マニキュアをお揃いにした
私たちの手はよく似ている

貴方に
置いていかれることを
あんなに怖がっていたけれど

今から
貴方をこの部屋に置いていく

出来ることが
きっと
まだあるから

この期に及んで
貴方に褒めて欲しい私は

暗闇の中で光る
矛盾した喜びを見つけた

それを集めて
悲しみの濃度を薄めていく

いくら馬鹿な私でも
いつかこんな日が来ることは分かっていた

だけど

こんなの全部
もっとずっと
先の未来だと思っていたよ

貴方はいつも
先回りして
心配ばっかりしてた

きっと

いずれ続く私たちが
何不自由なく
楽しく暮らせるように
急いで行ってしまった

そんな急いでどこに行くの

私には立ち止まってもいいって
振り返ってもいいって
言ったくせに

嘘つき

いっぱい色んなこと
約束したのに
一人で
どうやって叶えればいいの?

 

 

Copyright© 鈴木みろ|miro suzuki , 2020 All Rights Reserved.