上の空の上

上の空の上|第10話|大切な人を看取った記録|010

uwanosora010

 

 

 

 

 

 

 

結局
私も
誰も

限界をとっくに超えて
ひとり悶え苦しむ
貴方に

これ以上の我慢や頑張りを
要求する
勇気も権利もなくて

その時が来た

・・
それは

今までと桁違いに
厳重に守られたケースに入っていて

何人もの人間の
確認作業を通過して
貴方の身体の中に
確実に侵入していった

それから
数時間

眉間のシワが嘘みたいに姿を消した

私達は
襲いかかるすべての恐怖を
人工的に
はるか遠くへ突き飛ばして
穏やかな柔らかな時間を手に入れた

ただそれと引き換えに
差し出してしまった
取り返しのつかない尊いもの

その代償の大きさに
心が追いつかず

自分を軽蔑し続ける

貴方はまるで
泣き疲れた子どものように
どこまでも深く眠っている

それはまるで
必死に働き続けて
ようやくたどり着いた
休みの日の二度寝のように
深く贅沢に
貴方は眠り続けている

こんなにも
儚く頼りなく
行ったり来たりして傷ついているのに
私はまた
錯覚してしまいそうになる

握った手の温もりが
このまま永遠に続くことを
願わずにはいられない

貴方は
眠ったまま
時々笑ったり
顔を強張らせたりしながら
今までとは違う
私とは違う世界を
泳いでいる

 

 

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