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第15話
嘘みたいだ
あんなに丸っこい
貴方が
こんなに小さく真四角に収まってしまった
でも
やっと
コーラ
飲めるね
しかも
思いっきり冷えたやつ
こんなに飲めないわよーて言いながら
飲み干すんでしょ?
うなぎも
餃子も食べ切れないほど買っておいたよ
奮発して高島屋のやつにしたんだ
あんみつも
わらび餅も
これからは
いくらでも
クリームかけていいんだって
そうだ
日帰り旅行なんて言わないで
海外旅行に行こう
それからまた犬も飼いなよ
こっそり教えてくれた
あのダサい名前つけてさ
今度は反対しないから
どこにでも連れていこう
ねぇ
無視しないで
何か言ってよ
おろしたてのスプリングコート
柔らかい薄手のストール
編みかけの編み物
洗剤の買い溜め
紙袋のストック
貴方の気配に
支配されて
気が緩む
あぁやっと
貴方と私の
2人きり
身勝手な私は
わざと貴方に聞こえる声で泣く
私が旅立つ日
貴方は笑顔で見送ってくれたのに
いつまで泣いてんの
怒ってうんざりして
まだここにいたらいい
貴方にまだここにいてほしい
それから
少ししたら梅雨が明けた
すぐさま
自己顕示欲の強い
太陽が割り込んでくる
あんなに待ちわびていたのに
あまりの暑さに
うんざりする
私はやっぱり身勝手だ
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