前のお話(第16話)
-
上の空の上|第16話|大切な人を看取った記録|016
続きを見る
第17話
不器用でも必死に
駒を進めようとする私の
勇気とプライド
歪な作り笑いを
誇らしげに
静かに
貴方は見守っている
貴方は潔く美しい人だ
これまでのことは
忘れてもいいから
忘れちゃうくらい
これからの未来を
楽しく
幸せな時間に埋もれて生きていきなさいと
囁いてくれる
寂しさを噛み殺し
自分を後回しにしてでも
私の背中を押し続けてきた
貴方が
今更
拗ねるわけがない
それどころか
貴方の残像が
そこら中から溢れ出て
未だに
私を強くしていく
私が何か自慢話をすると
いいわねぇと笑って
目尻のシワが深くなる
それから丁寧に喜びを噛み締めて
一人で笑う
「うふふ」
私はそれが大好きだった
最も脳裏に焼き付いている貴方の姿
私はその姿が大好きだった
深い喪失感に
支配された
孤独な夜ですら
途切れることなく
吹き続ける
この迷いのない
美しい
追い風こそが
貴方が私に
遺してくれた
最大の愛だ
わたしたちはまた必ず会える
その時はまた
抱えきれないほど
たくさんの自慢話を持って行こう
追い風を信じて
今は描くんだ
次のお話(最終話)
-
上の空の上|第18話|大切な人を看取った記録|018|イラスト版<最終>
続きを見る