前のお話(第15話)
-
上の空の上|第15話|大切な人を看取った記録|015
続きを見る
第16話
強制的に
日常を注ぎ込んでくる
社会や季節の
無神経な仕組みに傷つきながら
その無関心な距離感に
救われる
少しずつ
だけど確実に時間が過ぎていく
声も
少しずつ
色褪せてしまうんだろう
だから
頑張れという貴方の声が
貴方の声のまま
保存されている
今のうちに
強くなりたい
足を止めれば
悲しみが頭を支配して
戻れなくなりそうで
必死にしがみつく
そうして
部分的に
少しずつ違和感が減っていく
私は
貴方を第三者のようにして
新しい日常を組み立てていく
次第に当たり前になる
新しい光景
新しい世界
私は薄情者なんだろうか
もしかしたら
貴方は寂しがっているのだろうか
葛藤は一瞬で消えた
馬鹿にしないで
と笑う貴方が
私をまた導く
そうだ
貴方の愛はそんなもんじゃない
葛藤すること
それ自体が不本意だと怒っている
次のお話(第17話)
-
上の空の上|第17話|大切な人を看取った記録|017
続きを見る