上の空の上|第16話|大切な人を看取った記録|016

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第16話

 

 

 

 

 

 

 

 

強制的に
日常を注ぎ込んでくる
社会や季節の
無神経な仕組みに傷つきながら

その無関心な距離感に
救われる

少しずつ
だけど確実に時間が過ぎていく

声も

少しずつ
色褪せてしまうんだろう

だから
頑張れという貴方の声が
貴方の声のまま
保存されている
今のうちに
強くなりたい

足を止めれば
悲しみが頭を支配して
戻れなくなりそうで
必死にしがみつく

そうして
部分的に
少しずつ違和感が減っていく

私は
貴方を第三者のようにして
新しい日常を組み立てていく

次第に当たり前になる
新しい光景
新しい世界

私は薄情者なんだろうか
もしかしたら
貴方は寂しがっているのだろうか

葛藤は一瞬で消えた

馬鹿にしないで
と笑う貴方が
私をまた導く

そうだ
貴方の愛はそんなもんじゃない
葛藤すること
それ自体が不本意だと怒っている

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