上の空の上|第17話|大切な人を看取った記録|017

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第17話

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

不器用でも必死に
駒を進めようとする私の
勇気とプライド

 

歪な作り笑いを
誇らしげに
静かに
貴方は見守っている

 

貴方は潔く美しい人だ

これまでのことは
忘れてもいいから

忘れちゃうくらい
これからの未来を
楽しく

幸せな時間に埋もれて生きていきなさいと
囁いてくれる

 

寂しさを噛み殺し
自分を後回しにしてでも
私の背中を押し続けてきた

貴方が

今更
拗ねるわけがない

 

それどころか
貴方の残像が
そこら中から溢れ出て

未だに
私を強くしていく

 

私が何か自慢話をすると
いいわねぇと笑って
目尻のシワが深くなる

それから丁寧に喜びを噛み締めて
一人で笑う

「うふふ」

私はそれが大好きだった
最も脳裏に焼き付いている貴方の姿

 

私はその姿が大好きだった

深い喪失感に
支配された
孤独な夜ですら

途切れることなく
吹き続ける

この迷いのない
美しい
追い風こそが

貴方が私に
遺してくれた
最大の愛だ

 

わたしたちはまた必ず会える

その時はまた

抱えきれないほど

たくさんの自慢話を持って行こう

 

追い風を信じて

今は描くんだ

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