上の空の上|第11話|大切な人を看取った記録|011

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第11話

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私達は
引き返せない
一本道を歩く

どんどんと
道幅が狭くなる

そこには

道路標識も
交差点もない道

もう二度と迷うことも
迂回することも
スピード違反で捕まることもない

 

迷うことは

迷えるということ

 

憤りや葛藤ですら

今は輝いて見える

 

この
平坦な

何もない道

 

だけどこんな時こそ

 

生涯枯れることのない
美しい花が咲いていることを
私達はもう知っている

 

全ての意識を
手繰り寄せる

どんな小さな花も見逃さないように

この小さな花が
この先の私をきっと支えてくれるから

貴方に怒られそうなくらい

だらしなく

だらだらと歩いて

時間を稼いだけれど

 

もうこれ以上進めないところまで

来てしまったみたい

次のお話(第12話)