私は時々
思い立って
海外にひょっこりと出かける
飛行機に乗って
誰も私を知らないところに行く
名前どころか
年齢も国籍も
誰も何も知らない
それが好きなところ
インドの路地裏
10円のチャイ屋さん
名前を聞かれて
咄嗟に
「マイク」と言ってしまった
でも
おぉ
君はマイクか
マイクって男性の名前かと思っていたよ
と言われつつ
受け入れてくれた
私を「マイク」と呼ぶおじさん
そうか
私はマイクか
嘘をついてはいけない
そんなこと分かっている
でも
知らない人に名前を教えることを躊躇してしまう気持ちと
無視して通りすぎることを選ばなかった自分の好奇心と
私は2,3分
マイクとして
生きる
おじさんは
マイクにチャイを飲むかと聞く
どこに行くのかという
おじさんは自分のオートリキシャに乗って欲しいという
営業と会話が行ったり来たりしながら
もう二度と会わないその人と
もう二度と交わらない時間を共有する
さようなら
おじさん
さようなら
マイク